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クレモナにてカパノーネ

僕にとって、よく見た風景が並ぶ。懐かしいというより日常。おそらく初めてこの街を訪れたときも、そんな感情を抱いていただろう。イタリアにいても特に人が優しく、すべてを受け入れてくれるような、温かさを感じる街。そしていつの間にか、この街のとりこになっている。

クレモナに行っていた頃、必ず歩いていた通り。そこがこの日の撮影のスタートポイント。パン屋やバールが懐かしく、ある出来事のあった思い出のある街角である。

中澤さんのヴァイオリン製作用のパーツを販売するお店がすぐそこにある。パネヴェッジオで切り取られた木が、一つ一つの木に印をつけられて、所狭しと並べられている。

ここで中澤さんにインタビューをする。パーツごとに説明を一生懸命にしてくれる中澤さん。気持ちが入りすぎて滑稽な感じになってしまっているのも、それもクレモナに関わる人の性なのだろうか。とても愉快でありながら、言葉が染み込んでくる。

この日の街は、修学旅行で来ていた学校の子供たちが、頻繁に通りを歩いていた。そんな光景を監督は気に入ったようで、お店での撮影の最中、しきりに「子供!子供!」というが、カメラを向けたときには過ぎ去ってしまっていた。

午後は街から少し離れた郊外にある、カパノーネという大きな倉庫のようなところへと向かった。

カパノーネという言葉を調べると、建物、小屋のような意味が並んでいて、工房なのかなと思ったところ、とんでもなく大きな施設が現れて来た。一つのフロアにバイオリンからコントラバスまでのそれぞれの木の材料が、ビッシリと詰め込まれている。

下のフロアでは、木を切り分ける部屋や、バイオリン製作の部屋などがある。中澤さんは職人さんが製作している部屋を、行ったり来たりしていた。「木の厚みを0.2mm削る」など、とにかく細かく、懇切丁寧にやり方を教えている。

ヨーロッパだと、とかく人種に対する偏見が多く、特に日本人を含めたアジア人は、民族的に低級に見られがちだから、尚のこと、中澤さんから技術を吸収しようとしている様を見せられ、信頼されていることを感じた。「毎日、板を叩いて、耳を鍛える」職人としてのスタンスを伝えているようだった。それでも弟子の中にもプライドが見られるようで、伝えることの難しさを、その場でも口にしていた。

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