地球交響曲第九番

制作意図

太陽系第3惑星「地球」は、それ自体がひとつの巨大な「生命体」であり、私達人類はもちろんのこと、動物も植物も、虫もバクテリアも、海も山も、岩や風も、全ての存在が互いに繋がり、互いに影響し合って40億年という歳月を生き続けてきた。この、人智を遥かに超えた超高度な「生命システム」のことを「ガイア理論」と名付け、1984年に発表したのがイギリスの生物物理学者J・ラブロックだった。ちなみに「ガイア」とは、ギリシャ神話の「地球の女神」の名である。「ガイア理論」の事を初めて知った時、私はそれ迄「神話」に依ってしか語り得ないと思っていた「生命(いのち)の不思議」や「宇宙の神秘」が、科学の言葉で語られ始めた事に大きな希望と勇気を与えられた。それが、私が「地球交響曲~ガイアシンフォニー」を作ろうと決意した動機であった。

ラブロックに初めて会った日、彼は開口一番こう言った。
「西洋社会では、なかなか受け入れられない ”ガイア理論” を日本人はどうしてこんなに素直に受け入れてくれるのだろうか?」
私はとっさにこう答えた。
「日本文化の深層、日本人の無意識の自然観の背後には遙か縄文時代から受け継がれて来た ”八百万(やおよろず)の神(かみ)” という考え方がある。あらゆる自然現象の背後には、それぞれに異なる現象を司る、八百万もの神がいる、という考え方だ。こういう無意識の自然観があったからこそ、私も含め、ほとんどの日本人はあなたの『ガイア理論』を素直に直感的に、『正しい』と受け入れたのだろう。」

「第一番」から「第八番」まで、それぞれの作品には、一見、「超人」の様に見える偉業を成し遂げた世界中の人々が4~5人ずつ登場する。彼らが「異口同音」に言う言葉がある。「こんな偉業にみえることを成し遂げられたのは、私個人の能力ではない。自分の生命が、人智をはるかに超えた『ガイア』の超高度な『生命システム』に生かされている、と確信した時、“偉業” にみえることが現実になっていたのだ。」

楽聖ベートーヴェンは生涯に9本の「交響曲」を作曲し、交響曲「第九番」を作り終えた後、この世を去った。彼は、この「第九番」で、初めて楽器だけではなく人間の歌声「合唱」を入れた。映画、地球交響曲「第九番」を作り始めるに当って私の中に「当時すでに聴覚を失っていたべートーヴェンの耳に人間の歌声はどのように響いていたのだろうか?」という想いが渦巻いている。

龍村 仁

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