Steven Mithen

イギリスの認知考古学者
スティーヴン・ミズン博士

(認知考古学者 英国レディング大学初期先史学教授)

私たち日本人は、「ネアンデルタール人」と聞くと、人類(ホモサピエンス)がこの地球に登場する前に絶滅した、類人猿に近い“野蛮人”を思い浮かべる人も多いだろう。

ところが、最近のめざましい考古学の“新発見”によって「ネアンデルタール人」は、私達と同程度の大きな脳を持ち、発達した喉を持ち、「言葉」ではなく、「歌声」によって互いに高度なコミュニケーションをしていたのではないか、という学説が生れてきた。ミズン博士は、この学説の提唱者である。

なぜ、私たち人間はこれほどまでに音楽を作り、音楽に耳を傾けずにいられないのか。ミズン博士は、ネアンデルタール人は音のパノラマの世界に住み、大きな脳で、言葉ではない歌でコミュニケーションをしていたのではないかと考えたのだ。

21世紀になり、ヒトゲノムの塩基配列が決定されると、旧人であるネアンデルタール人についてもゲノム配列が決定されるようになり、数パーセントであるものの、私たち現代人にはネアンデルタール人のゲノムが伝えられているという結果が得られたという。さらにわれわれ東ユーラシアの人間の方が、ネアンデルタール人のゲノムを少し多めにもらっているというのだ。面白いことに縄文人のDNAを調べると、東ユーラシアの人たちに近いことがわかる。日本人のなかでも特に縄文人のDNAを受け継いでいるのはオキナワ人、アイヌ人の遺伝子だという。約3万年前、最後の氷河期の頃、ユーラシア大陸にいた狩猟民ネアンデルタール人は、寒さを逃れる為に東へと移動する大型動物を追ってユーラシア大陸の東端まで達し、当時まだ陸続きだったカムチャッカを経て、縄文時代の日本列島に到達したのではないか?この時の縄文人との出会いから始まるのではないか?

私は自分の中の遺伝子を通して「ネアンデルタールの歌声」を聴きたいと思っている。

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