「この世に起こる全ての現象で、それ単独で起こっているものはなにひとつない。全てはあらかじめ繋がって起こっている。だから、繋がっているのか否かを思い煩う必要はない。自分自身の場で、自分自身のやり方で、ベストを尽くしていれば、その影響は必ず外の世界によい影響を与えてゆく」。
『地球交響曲 第二番』の出演者、ダライ・ラマ法王の言葉である。環境問題に取り組む個人の姿勢について尋ねた時の答えだった。
「この宇宙の全ての存在は"量子真空エネルギー場"によって時空を越えて互いに影響し合っている。とくに、現代のように既存の価値観が崩壊してゆく危機的な時代にあっては、アマゾンの奥地で一羽の蝶の羽根が起こした小さな風の変化が、一週間後には太平洋で巨大台風に発達するということが現実に起こり得る(カオス理論)」。
こう語ったのは『地球交響曲 第五番』の出演者、哲学者で物理学者のアーヴィン・ラズロ博士だ。
数千年の歴史を持つチベット仏教の叡智と、最先端の物理学の智見が同じ事を言っている。
だから人間はおもしろい。
それにしても、最近世界各地で起こる凄まじい異常気象や人心の荒廃に、そのうち、とてつもない地球規模の大災害が起こるのではないか、という不安を抱いている人も多いと思う。だからこそ、ガイア理論のジェームズ・ラブロック博士(『第四番』出演)の新刊「ガイアの復讐」が世界的な話題となり、元米副大統領アル・ゴアのドキュメンタリー『不都合な真実』に大勢の観客が詰めかけるのだろう。
そんな地球規模の危機に対して、小さな自分はいったい何ができるのだろうと考えると、ふと絶望的な気分にもなる。そんな時、先述の2人の言葉は大きな勇気を与えてくれる。
「全ての存在はあらかじめ繋がっている」ことを知ることは、私達にある種の安心感を与えてくれる。「誰かに見つめられている」、「何かの役に立っている」という思いから生まれる安心感は、積極的でポジティブな行動を生む。「誰も見てくれない」、「何の役にも立っていない」という思いから生まれる孤立感は、ネガティブで破壊的な行動を生む可能性が高い。だからと言ってこんな時代に「全ての存在は繋がっている」と言われても、それは頭ではわかっていても、実感・体感できない、と言う人がいるかもしれない。そんなひとのために、ひとつ小さな提案がある。
この世の全ての存在は、自分も含めそれぞれに独自の"音楽"を奏でている、と思ってみるのはどうだろうか。目の前の樹が、葉・幹・枝全てを使って独自の"音楽"を奏でている。そのメロディーやリズムを聴きながら、私自身が刻々と変化する生演奏を奏でてゆく。共奏する相手は雲でも水でも人でもなんでもいい。コツは相手の奏でる"音楽"をよく聴くことだ。聴くことによって自分の中に新しい"音楽"が生まれ、それがまた樹の"音楽"と響き合ってさらに美しい"音楽"を創造してゆく。
世界はこんな風に繋がり、響き合っていると思うのだが・・・・・・。
デジタルTVガイド・連載『地球のかけら』 2007年4月号
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