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クレモナにてポー川のほとり

イタリアでは、一日だけ雨の予報だった。

中澤さんがフレームに入って撮れるシーンは、ほぼ撮り切っていたこともあって、それ以外で何が撮れるか?という日だった。僕がふと思いついたのは、この日、土曜の朝は街の中心でマーケットをやっていることだった。とにかく何がある街、というわけでもないので、提案できるのもそれぐらいだった。

街の象徴でもある、ストラディバリ広場のストラディバリ像が、マーケットの屋台に埋もれて消えてしまうほど活気がある。と同時に庶民的すぎて、あまり画にならない。かろうじて大聖堂前の広場の花屋がきれい。でも雨のせいでテントが出ている分、見晴らしもよくなくて、残念なイメージ。。

そんな雨の中、ポー川に来た。ポー川は北イタリアを東西に走る大河川である。映画のタイトルになったり、パルマの生ハム製作の過程においても重要とされている川で、僕はクレモナにはポー川に訪れるためだけに来ていたこともある。

川のすぐ横には大きな公園があるものの、河川敷には運動ができるような場所があるわけではなく、対岸も林で覆われている。象徴的な何かがあるわけでもないが、このシンプルさが僕を引きつけていた。それと空気汚染がひどい街にいただけに、澄んだ空気に包まれた静かなこの空間がやけに愛おしかった。

撮影されていた川にはどんなものが映っていたのかといえば、大したものはないだろう。僕にはそこにあった空気を目で感じることができるかといえば、そうでもないのかもしれないが、そのときの生活と対比されたものが、そこには映っているのかもしれないと思うと、それこそが僕に必要なものなのかもしれない。

いつまでも忘れずに自分の中にしまっておきたいもの。それがこのクレモナの街にあったように感じた。

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