令和五年　一月五日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　名嘉　睦稔

胡命(いましみこと) 龍村仁翁命(おきなのみこと)様の在りし日のお姿を湧き出る涙を鎮(しず)めつつ偲びますに、初めてお出会いした日のことが思い出されてまいります。

天河神社社殿御造営はじめの年、平成元年五月初旬に初めてお出会いさせていただきました。

斎庭(ゆにわ)の掃き清めをしていた私が、石段を登って行く男性の姿を拝見したのが最初でした。参拝されて石段を降りてこられ、「東京から来た龍村です」とご挨拶いただきました。天河社に残る能装束の中に、龍村織の装束がある事を思い出し、幼いころ父に連れられて由緒ある京都の龍村家にお伺いした事を思い出しました。「織物をされている京都の龍村さんですか？」と聞き直しましたところ、「そうです」と御返事が返ってきました。

その時、ああご縁があってお参りくださったのだなあ、ありがたいことだと感じたのであります。そのあと古い社務所でお茶を一服差し上げて、よもやま話をしたように記憶しております。

いよいよ七月の御遷座祭(ごせんざさい)がまじかになり、迎えるにあたり、山頂近くにある天の川の源泉の御神水と、弥山山頂奥宮でのご神火を裁くため、吉野熊野最高峰弥山に登拝いたしました。その時、龍村監督様にも御同行をお願いいたしました。龍村監督様は厳しい山道をカメラを背負い登られ、山頂の神事を映像に撮り納められました。後でお聞きしますに、これがガイアシンフォニーの撮り始めであったとの事でした。

三十数年にわたるガイアシンフォニー「地球交響曲」第一番から第九番までの製作の中では、撮影中も自分の命さえ落としかねないような危険な場面もあったかと存じますが、一心に撮影をされ、大いなる意識に集中し、観る人の心の奥底に響く映像作品として創り上げられました。神業 (かむわざ)そのものであったからこそ、人々の心に突き刺さっていったものと存じます。

自分の生活観を捨て、只々、一心に打ち込んでおられるお姿に接しますに、私自身、御尊敬の念と共に、その御力に圧倒される思いでした。大自然、多種多様なものがお互いを尊重しつつ、共存していく。地球のいのちと共に含1していく、人々の心を開いていく、まさに、岩戸開きはこれなり、と感じた次第です。言葉に上げて言い尽くすことはできませんが、龍村仁監督様の魂の奥底に燃え盛る大いなる命が、ガイアシンフォニーという映像作品に結実し、二十一世紀の、地球全体の、映像に触れた、特にお一人お一人の本当の意識の覚醒の岩戸を開いて下さったのだと存じます。

ガイアシンフォニーという言の葉(ことのは)とその素晴らしい魂は、日本の国の隅々まで伝わり一人一人の大宇宙神、大宇宙の命の御輝きとして一人一人の意識の中に納められ生き続けるものと確信致します。

第九番の製作に入られる時に身に病を抱えられ、奥様のゆかり様と共に懸命に第九番を創り納められました。

長きにわたり誠心一筋(まことごころひとすじ)に、身体をいとうことなく、懸命にお働き下さった御功績に只々頭(こうべ)を垂れて、伏して伏してありがとうございました、の他ありません。長き間の教え導き、本当にありがとうございました。

残されし、御家族様、御親族様、ガイアシンフォニーにお働きされた方々、ガイアシンフォニーという言の葉を受けられた方々のお悲しみはいかばかりと存じますが、どうぞご自愛下さい。

龍村仁監督様の魂は宇宙天涯に神上がりされ、心安らかに御鎮まり下さい。

監督様の持っている本来の尊い魂の輝き、全身全霊をかけて打ち込まれたガイアの意識は、大宇宙に充満し、新たなる時代の出発となり、人間はもとより生きとし生ける全ての命が、大感謝と共に大拍手を送る事でありましょう。

伏して伏して心よりの感謝の祈りをもって哀悼の意を表します。

心安らかにおやすみください。合掌

大峰本宮　天河大辨財天社
(おおみねほんぐう　てんかわだいべんざいてんしゃ)
名誉宫司　柿坂　神酒之祐
(かきさか　みきのすけ)
宮司　柿坂　匡孝
(かきさか　まさたか)

JINのためご参集の皆様に
私の愛全てを送ります。
JINは大切な友人でした。
巡り会えた喜びを
ずっと忘れません。
佐藤淳・拙訳

ご遺族皆様に謹んでお悔やみを申し上げますとともに、故人の安らかなるご永眠を心よりお祈り申し上げます。