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   私が初女さんに初めてお目にかかったのは今から25年前、  

映画「地球交響曲第二番」の 出演者を捜がし始めた時だった。

弘前に、初女さんがむすんだ梅干し入りのおむすびを食べて

自殺を思いとどまった青年がいた、という話しを聴いたのだ。

おむすびひとつで人を甦らせた女性、 

この方にはどうしても会わなければ、と思った。 

それから一年間、冬・春・夏・秋と岩木山の麓にある

「森のイスキア」という施設で撮影させていただいた。

特別な仕掛けは全く必要なかった。

彼女は訪ねてくる私達の為に毎回おいしい食べ物を作ってくださった。  

そのプロセスそのものが珠玉の映像になった。

人間が生きて行く為に誰でも行う「食べる」という「俗なる営み」の中に

最も「聖なる営み」がある、という事を教えられた撮影だった。



今、私は「地球交響曲第八番」を完成し、その上映会の為に全国を飛びまわっている。

「自分にとって大切な人が亡くなった時、まだ生き続けなければならない私達に

与えられる使命は、その人が望んだように生き続けることだ、と私は思います」

初女さんの言葉である。

「地球交響曲第二番」佐藤初女篇は、今も最も大勢の人々が「又、観たい」と

おっしゃる作品になっている。

                                  
 平成28年2月1日 龍村仁

<東奥日報 2月2日付け 朝刊紙面より>