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5/15「ガイア三番」トリヴィア#1

来る5月31日(土)に「第三番」が明治神宮の参集殿で上映されます。

初めてご覧になる方もいらっしゃると思いますが、きっと今までに多くの方々が色んな思いを持ってこの映画をご覧になったと思います。

そこで、今回の日誌では「第三番」の制作時にまで記憶を遡り、スクリーンには見えない、でもその背景に感じて頂けるかもしれない事を少しだけ綴っていきたいと思います。

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#1ビル・フラーの静寂

1996年9月

アラスカ・フェアバンクスに降り立った時には、もうすでに初雪が舞っていました。

つい1週間ほど前、亡き星野さんを送るメモリアル・サービスがこの地で行われた時には、澄み渡った青空と萌えるような紅葉があたりを覆っていたのがウソのようです。そしてその夜に初めて見たオーロラが今でも忘れられません。

この数日で、足音も無く、でも駆け足で冬がやってきていました。

そんな中、静かにガイアの撮影も始まりました。

今回会う方々は、メモリアル・サービスで初めて会った方々ばかりです。

でも、星野さんの本の中では何度も会っている、そして今この時を我々と同じ思いで迎えている方々ばかりでした。

まず最初にお会いしたのは、ビル・フラーでした。

70歳を過ぎても水道を持たないその生活は、窓の外を舞うかすかな雪や、木の葉のわずかな動きも感じる様な、静かな佇まいでした。

ゆっくりとそして一言一言、愛おしむ様に言葉を発するビル。

その言葉と言葉の間に散りばめられた、一瞬の静寂。

その「静寂」が、なんとフィルムにも映っていたのです。

それは、後にフィルムを現像して初めて分かった事なのですが、

そこにはカメラが回っている音が、かすかに聞こえているのです。

正確には、静寂の音ではなくカメラの音です。
でもその音は、ビルが発する大切な言葉の中に宿る「静謐さ」故の何かとしか思えませんでした。

静寂の中、カメラは自然とビルの手元にパーンしていきます。

そのレンズの先には、

「幸せは その中に悲しみを内包しています」

という、ビルの言葉がありました。

※ 映画の中でビルが歌う「You are my Sunshine」のハモりパートを歌っているのは、龍村監督です!共に歌う二人の目には、一粒の輝くものがありました。

2007年、ビル・フラーはこの世を去りました。

(ラインプロデューサー・西嶋)