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5/26「ガイア三番」トリヴィア#8

#8春ですね…

「春ですね…」
星野直子さんは、窓の外にフッと目を向け、そうささやいた。

シシュマレフ村での撮影を終えフェアバンクスに再び戻って来た時には、明らかに季節が前に進んでいるのが感じられました。それはほんの数日間だったのに、星野さんの自宅に続く道にはワイルドフラワーの花が咲き始めようとしていました。

1997年4月7日
今回のアラスカロケの最後に、直子さんにお話を伺わせて頂きました。
まだ、内面的にも色々な意味で整理が着いていない事は想像されましたが、あえて今のお気持ちを聞かせて頂いたのです。
監督の他、最小限のスタッフだけを部屋の中に残し、インタビューは始まりました。

その間、私は翔馬くんのおもりを屋外でする事になりました。
屋根に積もった雪が少しずつ融け、かすかな水音となって聞こえてきます。その音に興味津々の彼は、時折その雪が屋根から滑り落ちてドサッと音をてるのを見て、声をあげてはしゃいでいました。
ささやかですが、まだ幼い彼と二人で春の訪れを一緒に祝うひと時でした。

ちょうど、部屋の中で直子さんのあの一言が発せられたその時、窓の外にいた彼にもその言葉がきっと伝わってきた事でしょう。
その後の彼の人生は、私には知る由もありませんが、ある意味、普通の環境と違った事に思い悩まされた事もあると思います。
そんな彼も、今ではもう何回となく春の訪れを迎えてきた事でしょう。
そしてこれからも、春は訪れてきてくれます。

「春ですね…」

 

※この2年半ほど前、同じこの場所で池澤夏樹さんと龍村監督が星野道夫さんにインタビューをしています。その時、星野さんはアラスカの春の訪れを愛おしむように語ってくれました。
『それは本当に感動したっていうか…。それまでなんにも川は動いてないんですね、それがボーンていう音がして一斉に川がドーって動き始めるんですね。静から動へ移っていくなんか季節感っていうか、信じられないシーンでしたけども…』

この時に制作された映像作品の一部は、5月31日の「ガイア三番」上映時に、特別公開させて頂く予定です。

(ラインプロデューサー・西嶋)